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『宗教学
──ブックガイドシリーズ 基本の30冊


2015年4月30日、人文書院より刊行)


■紹介文

オウム真理教事件の蹉跌を越えて、
宗教について体系的に思考するための30冊。

宗教学の気鋭による、渾身のブックガイド。古今東西の基本書からカルト宗教論まで幅広く丁寧に解説します。宗教とは何かを根本的に論じた序文にも注目下さ い。初学者に最適であることはもちろん、宗教問題に揺れる現代世界を考える上でも必読です。書店の棚作りの参考にもぜひご活用ください。

※人文書院のサイト(こちら)で、「はじめに」のPDFファイルを公開しています。

■目次
はじめに──宗教の四段階構造論 7

   理論と体系を欠いた危うい「学」──宗教学の再構築に向けて
   宗教と呪術
   宗教の四段階構造論
     1)原始の祖霊信仰
     2)古代の多神教(民族宗教)
     3)中世の一神教(世界宗教)
     4)近代の国家主権

第1部 祖先崇拝の論理 23

 フュステル・ド・クーランジュ『古代都市』 24
 ──「死者崇拝」の上に築かれた古代の秩序──
   家族宗教における祖先崇拝──竈神と聖火
   都市国家の宗教への発展
   階級対立と革命
   社会は「信仰」を基盤として作られる

 加地伸行『儒教とは何か』 31
 ──祖先と子孫を結ぶ「血の鎖」の生命論──
   東北アジアの死生観と招魂儀礼
   「孝」の生命論
   宗教性と礼教性の分離
   中央集権的官僚制への適応
   祖先崇拝という伏流水

 柳田國男『祖先の話』 37
 ──家の垣根を越える「みたま」の祭り──
   正月の年神
   盆の本義
   靖国神社の「みたま祭り」

第2部 宗教の基礎理論 43

 ロバートソン・スミス『セム族の宗教』 44
 ──「聖なる共食」によって作られる共同体──

   宗教の本質は儀礼にある
   「血の絆」に基づく政治組織としての宗教
   供犠の歓楽

 ジェームズ・G・フレイザー『金枝篇』 50
 ──「王の殺害」 ~死を越えて受け継がれる永遠の生──

   模倣呪術と感染呪術
   公共的呪術師の誕生
   呪術師から祭司王へ
   「森の王」の死と再生

 エミール・デュルケム『宗教生活の原初形態』 56
 ──「社会を産出する根源力」としての宗教──
   聖俗論に基づく宗教の定義──共同体の形成機能
   「祖先の神秘的身体」としてのトーテム
   儀礼の諸形態と集合的沸騰

 ジークムント・フロイト『トーテムとタブー』 63
 ──「母との一体化」から「父の権威の承認」に至る道程──
   ヒステリー研究
   幼児の性欲論
   エディプス・コンプレックスと神経症
   近親姦と殺害の禁忌
   原父殺害と「死せる父」の影響力

 ★コラム① 「フィクション」という概念 70

第3部 中世における政治と宗教 71

 マルセル・パコー『テオクラシー 中世の教会と権力』 72
 ──教皇権の伸張と「主権」概念の生成──
   キリスト教と政治
   カトリック的テオクラシーとは
   テオクラシーの発展と衰退
   近代国家の雛形としての教会

 エルンスト・H・カントーロヴィチ『王の二つの身体』 79
 ──「コーポレイション」=共同体/法人の系譜学──

   自然的身体と政治的身体
   〈キリスト〉から〈法〉へ
   神秘体としての国家
   死を越えて生きる王
   宗教的制度の根幹としての「共同体」

 菊池良生『戦うハプスブルク家 近代の序章としての三十年戦争』 86
 ──「キリスト教共同体」を崩壊させた、史上最大の宗教戦争──

   ハプスブルク家による「キリスト教帝国」の夢想
   デンマーク、スウェーデン、フランスとの戦争
   ウェストファリア条約──主権国家システムの形成

 井筒俊彦『イスラーム文化 その根柢にあるもの』 92
 ──イスラームの体系を形成する、「法と神秘」のダイナミズム──
   イスラームの根幹としての「コーラン」
   法と共同体
   神秘主義の二類型──シーア派とスーフィズム

 ★コラム② 政治神学とは何か 98

第4部 近代の国家・社会・宗教 99

 トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』 100
 ──市民契約によって誕生する「人造の主権者」──
   各人の各人に対する戦争状態──人間理性の隘路
   集合的生命体としてのリヴァイアサン
   教会の権威への批判
   社会統治のために作られる「虚構の神」

 マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 107
 ──現代社会の「鉄の檻」 ~キリスト教的禁欲精神の帰結──

   合理化を追求する精神
   ルターの天職概念とカルヴァンの予定説
   キリスト教的司牧権力=官僚制組織の浸透

 森孝一『宗教からよむ「アメリカ」』 114
 ──超大国アメリカの根底に潜む「見えざる国教」──

   アメリカの「見えざる国教」
   「国教」に対立した四つの教派
   キリスト教保守勢力の興隆
   揺れる超大国アメリカ

 村上重良『ほんみち不敬事件 天皇制と対決した民衆宗教』 121
 ──天皇を「唐人」と称して批判した、天理教の原理派──
   中山みきの神憑りと天理教の創始
   大西愛治郎と天理教の分裂
   天皇は「唐人」──国家神道との対決

 南原繁『国家と宗教 ヨーロッパ精神史の研究』 127
 ──「国家の神聖化」に抗するための理念と信仰──
   プラトン解釈──全体国家論か形而上学か
   キリスト教の「神の国」とヘーゲル哲学
   カントの批判哲学と永遠平和論
   ナチズムへの批判──国家と人間の「自己神化」

 ★コラム③ キリスト教を理解するには 134
第5部 個人心理と宗教 135

 フリードリヒ・シュライアマハー『宗教について』 136
 ──「直観と感情」によって把握される精神的宇宙──
   宇宙を直観すること
   従来の宗教観への批判
   新たな宗教の創出に向けて
   ニューエイジや精神世界論の源流

 ウィリアム・ジェイムズ『宗教的経験の諸相』 143
 ──現代人の不安と、「神秘経験」による心の救済──

   「健全な心」と「病める魂」の宗教
   神秘体験がもたらす精神変容のプロセス
   「疑似宗教」化する宗教心理学

 アンリ・エレンベルガー『無意識の発見 力動精神医学発達史』 150
 ──近代における「合理性」と「非合理性」の相克──

   前近代的な精神療法
   合理化に対するロマン主義的抵抗
   ユングの分析心理学──集合的無意識と自己実現
   ジャネの心理分析──心的外傷と解離

 ラルフ・アリソン『「私」が、私でない人たち』 157
 ──多重人格者の心に潜む「悪霊」と「内部の自己救済者」──
   多重人格者との出会い
   多重人格の構造と治癒
   神と悪霊の実在
   解離性障害──時代の風潮に左右される病

 E・キューブラー・ロス『死ぬ瞬間 死とその過程について』 163
 ──医療の高度化によって消失した「死」の姿を求めて──
   死を受容するまでの五段階
   死にゆく者の声を聞き取ること
   スピリチュアリズムへの傾倒
   幻想の肥大化とスキャンダル

第6部 シャーマニズムの水脈 169

 ミルチア・エリアーデ『シャーマニズム 古代的エクスタシー技術』 170
 ──「イニシエーション」による超常的トランス能力の獲得──
   遍歴の生涯──ルーマニア、インド、フランス、アメリカ
   インド体験の重要性
   イニシエーションにおける象徴的な「死と再生」
   呪的飛翔──原初の楽園への回帰
   アメリカの対抗文化から、日本の宗教学・新宗教へ

 I・M・ルイス『エクスタシーの人類学 憑依とシャーマニズム』 177
 ──社会の周縁部に生じる「憑霊」のエクスタシー──

   「精霊使い」としてのシャーマン
   社会的周縁化と憑依
   社会を守護するシャーマン
   社会の動的構造とシャーマニズム

 上田紀行『スリランカの悪魔祓い イメージと癒しのコスモロジー』 184
 ──心の病を癒やす、スリランカ村落社会の「心理劇」──

   「いきいき」の神様に見放された日々
   悪魔祓いの実相──孤独からの解放
   「癒し」のメカニズム──イメージが有する力

 ★コラム④ 心霊現象と多重人格

第7部 人格改造による全体主義的コミューンの形成 191

 ハナ・アーレント『全体主義の起原』 192
 ──大衆を巻き込みながら拡大する、全体主義の「世界観」──
   根無し草の大衆と「世界観」政党
   「陰謀勢力」に抵抗する結社としての党
   全体主義の国家支配──秘密警察と強制収容所
   「生の無意味さ」を核として渦巻く暴風

 チャールズ・リンドホルム『カリスマ 出会いのエロティシズム』 199
 ──冷徹な管理社会を粉砕する、「カリスマ」の熱い活力──

   カリスマと集合的沸騰の社会学
   群集心理学と精神分析の知見
   カリスマの原型と歴史的変容

 米本和広『洗脳の楽園 ヤマギシ会という悲劇』 206
 ──「無所有一体」を目的とした自我の解体──

   ヤマギシズム学園における児童虐待問題
   特別講習研鑽会──「腹の立たない人間」を作る
   「解離」の快楽と反復性

 ★コラム⑤ 現代における究極的イニシエーション 212

第8部 新興宗教・カルトの問題 213

 横山茂雄『聖別された肉体 オカルト人種論とナチズム』 214
 ──ナチズムの世界観の背景に潜む「神智学」の人種論──
   神智学の歴史観──人類の霊的進化と退化
   アリオゾフィ──アーリア人種優越論と反ユダヤ主義
   ナチズム内部のオカルティズム──ローゼンベルクとヒムラー

 小川忠『原理主義とは何か アメリカ、中東から日本まで』 221
 ──「聖典主義・二元論・終末論」に基づく反近代運動──

   シカゴ大学の「原理主義」研究プロジェクト
   米国のプロテスタント──原理主義の発端
   イスラーム原理主義の父、サイイド・クトゥブ
   日本の原理主義──水戸学と日蓮主義の「国体」論

 大田俊寛『オウム真理教の精神史 ロマン主義・全体主義・原理主義』 228
 ──「死」の姿を消失させた近代社会への強烈な反動──

   近代における公共的死生観の消失
   ロマン主義──精神の闇に潜む永遠の真我
   全体主義──個を融解させる緊密な共同体
   原理主義──世界の終末と審判
   現代社会に潜む「死」という空隙



 

  ■修正箇所一覧   
 
頁数・行数 修正前 修正後 備考
45頁・2行 スミスが1877年に行った連続講演   スミスが1888~91年に行った連続講演