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神話9 『魂の解明』
『ナグ・ハマディ文書』より
■1.女性としての「魂」

 「古(いにしえ)の賢者たちが、魂に女性名を与えた。実際魂は、その本性からして女性である。それは子宮をさえ持っている」。おそらくはギリシャ語の「魂(プシュケー)」という言葉が女性名詞であることに依拠して、「魂」が本質的に女性的な存在であることが冒頭で主張される。しかし「魂」は、天上の父(至高神)のもとにいたときは、処女であると同時に男女(両性具有)の姿をしていた。「魂」は本来、完全な存在だったのである。

■2.地上への転落

 その原因について明確にはされないものの、「魂」はあるとき父のもとから離れ、地上に転落し、肉体を持つようになってしまう。「魂」はこうして女性になったのである。一人の女性として地上を彷徨う「魂」を多くの無法者たちが襲い、彼らはあるときは暴力で彼女に傷害を与え、あるときは偽りの贈り物で彼女を説得し、凌辱の対象とした。

■3.「魂」の受難

 「魂」はその肉体で春をひさぐようになり、売春婦へと身をやつしてしまう。彼女は、自分が身を寄せた人々を、自分の夫であると信じたのである。このような「魂」に対して、多くの姦淫者たちは、あたかも自らが彼女の真実の夫であるかのように装って、次々に接近した。実際のところ、彼らは「魂」を辱めたが、彼女は身に受けたその恥辱ゆえに、もはやあえて彼らのもとを去ろうとはしなかった。しかし姦淫者たちは、やがて彼女を捨てて去りゆくのであった。

■4.後悔と嘆願

 天上の父なる至高神は、いなくなった「魂」を探し求め、その有り様を見出す。そして彼女は、地上で被った苦難と恥辱のために悲嘆に暮れ、父に助けを求める。「救い給え、父よ。ご覧下さい、私はあなたに申し開きをいたします。私は我が家を捨て、私の処女の部屋から逃げ去りました。もう一度、私をあなたのもとに戻して下さい」。

■5.引用による解明(1)

 『魂の解明』という文書では、「魂」の物語を背景にすることにより、他の経典や神話が再解釈される。この部分では、人間の淫行について、旧約聖書エレミヤ記、エゼキエル書、および新約聖書コリント書簡の一節が再解釈される(内容については割愛)。

■6.子宮の方向転換と、洗礼による清め

 「魂」が出会う者との交わりに没頭し、自分自身を汚している間は、彼女の苦難は止むことがない。しかし「魂」が真に悔い改めたときには、その子宮は「外側から再び内側へと」その向きを変えるとされる。同時に魂は、子宮の向き換えによって水に浸されるのであり、このような洗礼によって身の穢れを清められるのである。

■7.新婦の部屋

 清められた「魂」は花嫁として生まれ変わり、「新婦の部屋」の中に入る。彼女はその部屋を香で満たし、座して花婿を待ち続ける。「魂」は父の家から落ちて以来、記憶がなく、自分の花婿となる人物について知らないのである。これを見た父は、その長子を彼女の花婿として差し向ける。彼らは「新婦の部屋」において結ばれるが、これは肉体的な交わりを意味しない。彼らは欲望の苦悩を重荷であるかのように捨て去り、一つの命になるのである。

■8.引用による解明(2)

 男女の結合の仕方について、創世記や詩篇の章句に関する再解釈(内容は割愛)。

■9.魂の帰昇

 「新婦の部屋」において花嫁(「魂」)は、花婿との交わりによって彼から「霊的種子」を身に受け、良き子らを生み、彼らを育てる。こうした行いによって「魂」は再び父から神性を受容し、父のもとへと昇り行く。

■10.引用による解明(3)

 魂の再生と神のもとへの帰昇について、詩篇の章句に関する再解釈(内容は割愛)。

■11.祈りと悔い改めの勧告

 これまでの物語を振り返り、悔い改めること、そして父に向かって祈ること──「外面の舌をもってではなく、内面にあり、深淵から来た霊をもって」──が何より重要であることが勧告される。

■12.引用による解明(4)

 祈りと悔い改めの重要性について、福音書、イザヤ書、およびオデュッセイアに言及しつつ再解釈(内容は割愛)。
[出典]『ナグ・ハマディ文書Ⅲ 説教・書簡』
荒井献・大貫隆・小林稔・筒井賢治訳、岩波書店、1998年