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神話17 『マリヤによる福音書』
『ベルリン写本』より
■1.第一の啓示

 ペトロを始めとする使徒たちに対して、救い主が啓示を行う(しかし、冒頭の6頁が欠損しており、その具体的な内容は不明)。「人の子」があなた方の内部にいること、法制定者のようなやり方で法を与えてはならないこと、王国の福音を広く宣べ伝えるべきであることが告げられる。

■2.使徒たちが動揺し、マリヤが彼らを励ます

 救い主の言葉を聞いて、使徒たちは動揺する。「人の子の王国の福音を宣べるために異邦人のところへ行くといっても、われわれはどのようにすればよいのか」。すると(マグダラの)マリヤが立ち上がり、次のように言って使徒たちを励ます。「泣かないで下さい。悲しんだり、疑ったりしないで下さい。というのも、彼の恵みがしっかりとあなた方と共にあり、あなた方を護ってくれるのですから」。

 これに対してペトロは、「姉妹よ、救い主が他の女性たちにまさってあなたを愛したことを、私たちは知っています。あなたの思い起こす救い主の言葉を、私たちに話して下さい。あなたが知っていて私たちの知らない、私たちが聞いたこともないそれらの言葉を」と要請する。

■3.第二の啓示

 ペトロの求めに応じ、マリヤは、彼女が救い主から示された教えの内容を語り始める(しかしここでも、テキストに4頁の欠損があり、正確な内容は不明)。

 可視的な世界は、以下の七つの「権威」(アルコーン)たちによって支配されている。

  第一の権威 闇
  第二の権威 欲望
  第三の権威 無知
  第四の権威 死ぬほどの妬み
  第五の権威 肉の王国
  第六の権威 肉の愚かな知恵
  第七の権威 怒っている人の知恵

 七つの天を通り抜け、プレーローマ界に帰昇しようとする魂に対して、権威たちは尋問を行う。魂は、救い主から教えられたとおりの言葉を語ることにより、彼らに打ち勝ってゆく。

■4.使徒たちの論争

 マリヤの言葉を聞いた使徒たちは、その教えを受け入れるべきかどうかについて、次のような論争を行う。

 アンドレアス「彼女が言ったことに関して、あなた方が思うことを言ってくれ。救い主がこれらのことを言ったとは、私は信じない。これらの教えは異質な考えのように思われるから。」
 ペトロ「救い主がわれわれに隠れて、一人の女性と、しかも公開でではなく語ったりしたのだろうか。将来、われわれ自身が輪になって、皆で彼女の言うことを聴くことにはならないだろうか。救い主が彼女を選んだというのは、われわれ以上になのか。」
 マリヤ「ペトロよ、それではあなたが考えていることは何ですか。私が言ったことは、私が心の中で考え出したことであり、救い主について私が嘘をついていると考えているのだとすれば。」
 レビ「ペトロよ、あなたはいつも怒る人だ。今、私があなたを見ていると、あなたがマリヤと格闘しているのは、まるで敵対者たちのやり方のようだ。救い主が彼女を認めたのに、彼女を拒否するとは、あなた自身は一体何者なのか。確かに救い主は彼女をしっかりと知っていて、それゆえにわれわれよりも彼女を愛したのだ。むしろわれわれは恥じ入るべきであり、救い主がわれわれに命じたやり方で、福音を宣べるべきである。」

 レビの言葉を聞いた使徒たちは、あらためて決心し、福音の宣教を開始した。





[出典]『ナグ・ハマディ文書Ⅱ 福音書』
荒井献・大貫隆・小林稔・筒井賢治訳、岩波書店、1998年