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10.05.09 神智学の功罪
●オウム真理教を中心に、近代の宗教について勉強する日々。そのなかで特に気になったのは、「神智学」という存在が功罪を含めてきわめて大きな影響力をふるっているにもかかわらず、現在ではほとんど認知されていないということだった。以下、神智学が果たした歴史的役割について、簡単な覚え書き。

●(1)インドの独立。神智学はインドに本部を置き、その文化に高い評価を与えた。当時インドはイギリスの植民地だったが、神智学がヴェーダやヨーガの伝統 を評価したことは、インドの人々に自信を与えた。ガンジーを「マハトマ」と最初に呼んだのは、神智学者のアニー・ベサントであったとも言われる。

●(2)ユネスコの創設。神智学は、世界の諸文化に内在する神的な知識を探り出そうとする運動だが、その文化観や教育観が、タゴールやモンテッソーリを通じてユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の創設を促したと言われる。

●(3)オカルト人種主義。神智学では、人間が霊的な進化を遂げると主張されるが、こうした霊的進化論は、しばしば人種論とも結びついた(どの民族が霊格が高いか、など)。オカルト的な人種主義は、ナチズムの人種論の先駆を為したことが指摘されている。

●(4)新宗教の基礎。神智学の霊的人間論や世界論は、さまざまな新宗教の教義においてベースとなっている。オウムの教義にも神智学からの強い影響が認められ、日本のスピリチュアリズムにおいても、浅野和三郎が神智学を取り入れた。江原の言う「人生の地図」も、その骨格は神智学だと思われる。

●と、ここまで適当に列挙してみたが、はっきり言って私にもまだよく分かっていない。神智学については、客観的な立場から書かれた日本語の研究書は、まだ一冊もないのではないだろうか。時間があればいつか手がけてみたいテーマだが、誰か余裕があればぜひ取り組んでほしい(最後は投げっぱなし)。