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11.03.23 阪神大震災と地下鉄サリン事件を関連づけるのは誤り
★最近のネット上の言説を見ていると、今回の地震から95年の阪神淡路大震災を思い出し、それに加えて、そのおよそ二ヶ月後に地下鉄サリン事件が発生したことを想起し、今回もオウム真理教のようなテロ集団が出てくるのでは、と心配する内容のものがしばしば見られる。

★こうした危惧は、一般人に限られない。東浩紀は最近の記事において、「一六年前、阪神淡路大震災の二ヶ月後にオウム真理教のテロが起きたように、震災が国民に残した精神的心理的動揺は、のち思いもかけないかたちで吹き出す可能性がある」と述べている。http://bit.ly/glZkzN

★佐々木中もまた、最近出演したラジオ番組において、精神科医の中井久夫の言説に依拠しながら、ほぼ同種の見解を述べている。http://bit.ly/hnopUF

★これらの見解では、簡単に要約すれば、阪神大震災がオウムのテロにつながったということが言われているわけだが、私には率直に言ってこうした話は、根拠の乏しい眉唾物の議論にしか思われない。

★確かに、95年1月17日に発生した阪神淡路大震災が、世界の終末が近いというオウムの危機意識を何らかの仕方で強化したかもしれないということは、考えうることだろう。しかしだからと言って、阪神大震災が地下鉄サリン事件の引き金になったと考えて良いのだろうか?

★事実を丁寧に調べれば、その信憑性は限りなく低い。一般にはあまり知られていないが、オウムが最初に無差別テロを企図したのは、衆院選惨敗後の90年3月のことである。兵器開発がうまくいかなかったため、世間には広く知られなかったが、オウムは90年から95年にかけて幾度もテロを試みている。

★地下鉄サリン事件の直接の切っ掛けになったのは、阪神大震災ではなく、95年の元旦に、上九一色村からサリンの残留物が発見されたことを新聞が報じたことであろう。それ以降、オウムは社会や国家から疑惑の目を向けられるようになり、外部に対する危機意識を急速に高めていった。

★95年に入ってからオウムは、兵器開発の証拠隠滅など、警察の強制捜査対策に奔走しており、神戸の地震については、「占星術チーム」の予言が当たったことや、世間の目が一時的にオウムから離れることに幸運を感じただろうが、「それどころではない」というのが、幹部たちの本音だっただろう。

★ちなみに、オウムは神戸の地震の際にはボランティア活動に参加したことが知られているが、その実態がどのようなものであったかについては、田村智『麻原おっさん地獄』四四頁以下に詳しい記述があるので、参照して欲しい。

★3月にオウムが都内の地下鉄でサリンを散布したのは、直接的理由としては警察の捜査を撹乱するためであり、警視庁の最寄り駅の霞ヶ関駅をその標的としていた。阪神大震災と地下鉄サリン事件のあいだに因果関係はなく、あの時期に震災がなかったとしても、おそらくサリン事件は発生しただろう。

★東や佐々木は、震災によって国民のあいだに暴力的エネルギーが蓄積され、それがしばらく時間が経った後、しかも被災地から遠く離れた場所で噴出する可能性があると述べているように思われるが、そのようなことは本当に起こりうるのだろうか?

★確かに、かつて関東大震災の際に朝鮮人の虐殺が起こったように、震災「直後」には、混乱状態から暴動や窃盗やデマが発生するという現象が見られる。今回の地震でも、多少はそういった現象が見られた。(今回は原発事故の問題が大きいので、他の地震との比較はあまり成立しないけれども。)

★しかし、震災から数ヶ月経った後に、震災で蓄積された暴力的エネルギーが何らかの形で噴出するとは私には思えないし、少なくともオウムは、そのケースには当てはまらない。今のような時期に、こうした余計な不安感を広めることこそが、むしろ「震災デマ」の一つではないかと思うのだが・・・。