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10.04.26-28 オカルト・資本主義・成功哲学
▼オカルト思想というと、無知な大衆層のみが信じこむというイメージがあるかもしれないが、実はそうではない。経済や政治のトップにいる人間が、新しい理念や人間管理の方法を模索して、知らず知らずのうちにオカルトに感染するというケースは非常に多い。

▼少し以前の著作になるが、その意味では、斎藤貴男氏の『カルト資本主義』は必読の文献。多くの事例が網羅されており、現代社会がどれだけオカルトに感染しやすい土壌を持っているかが示されている。

■オカルトと経済界が接触する典型的パターンの一つに、「成功哲学」というものがある。世界は人間の意識によって作られているのだから、強い意志を抱けば れだけで世界は変わるはず、というもの(そんな訳はない)。ビジネス書のなかにオカルト本が紛れていることが多いが、大抵はこのパターン。

■日本における「成功哲学」の先駆けとなったのが、中村天風という人なのだが、ウィキペディアで経歴を見て、その破天荒な生き方に驚くとともに、私の高校の先輩であることに気づいた。しかも、柔道の試合で喧嘩になった相手を刺殺して退学になっている。先輩……。

■ただ、中村天風の経歴をよく見てみると、その破天荒な生き方の背景には、結核への恐れが潜んでいることが分かる。つい数十年前まで結核は重大な病気で、ほぼすべての人が、「自分は結核なのではないか」という恐れを抱いて生きていた。

■ハイデガーは『存在と時間』のなかで、本来的な生を生きるために、死を先駆的に決意する必要があると説いたが、結核を恐れる人々は、言われるまでもなくそのような生を生きていた。福田真人氏の『結核という文化』(中公新書)を読むと、そのことがよく分かる。