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『グノーシス主義の思想──〈父〉というフィクション』



2009年11月20日、春秋社より刊行
2023年1月17日、春秋社より新装版刊行


■目次
序章 3

  グノーシス主義との出会い
  グノーシス主義の難解さ
  グノーシス主義の諸資料
   1 ナグ・ハマディ文書
   2 ヘルメス文書(『ポイマンドレース』
   3 教父文献
   4 マニ教文献
   5 マンダ教文献
   6 その他のコプト語写本
  グノーシス主義をめぐる言説
   1 ロマン主義的な捉え方
   2 文献学的・歴史学的実証主義
  文献学とロマン主義の癒着
  グノーシス主義再考

第1章 グノーシス主義前史 31

  グノーシス主義と古代末期
 1 古代都市の信仰──「父」というフィクション 33
  クーランジュの『古代都市』
  死者の崇拝──供犠
  祖先の表象としての聖火
  家族宗教における「父」
  父というフィクション
  共同体の結合と、自然神の出現
  都市国家の成立
  都市国家の発展と崩壊
  新たな「父」の探求
 2 プラトン主義的形而上学 46
  ソクラテスの刑死
  魂の真実の故郷──イデア界
  「父」なる造物主による、世界と人間の創造
  「不動の動者」としての父
  新プラトン主義の神秘哲学──「父」と「娘」の合一
  プラトン主義とグノーシス主義の共通性
 3 ストア主義的自然学 56
  ストア哲学と「帝国」
  ストア主義の自然学
  運命愛と無情念
  星辰崇拝と皇帝崇拝の結合
 4 混淆主義的変身譚 62
  父なき時代
  性愛論の隆盛
  ナルキッソスとエコー
  アクタイオーンとディアーナ
  自己像の変容──性愛と攻撃性
  グノーシス主義の登場

第2章 二つのグノーシス神話 75

  代表的なグノーシス神話
 1 『ポイマンドレース』 77
  神話のプロット
  先行する諸思想の融合
  「古代宇宙論」の否定
 2 『ヨハネのアポクリュフォン』 90
  神話のプロット
  未知の「父」を求めて
  鏡に映る神
  知恵の過失──鏡像の反逆
  二世界の対立
  模倣の両義性
  「認識」の両義性へ
第3章 鏡の認識 113

  自分自身を知ること
 1 グノーシス主義と精神分析 116
  精神分析の導入
  鏡像段階論
  グノーシス主義と精神分析における「鏡」の理論
 2 プレーローマの成立と破綻 123
  「深淵」としての至高神──ヴァレンティノス派の教説
  「子」のみが「父」を知る
  父を知ってはならない
 3 奪われた自己像 134
  羨望──見ることによる取り入れ
  『シェームの釈義』における「羨望」
  体内化──女性器に変貌する闇
  マニ教の神話
  凌辱される神
  『魂の解明』
  シモン派の神話
 4 仮現論──真実の神の変容 146
  神が意図的に自己の姿を露出する
  『この世の起源について』におけるエヴァの凌辱
  変身するロゴス
  欺く神──シモン派の仮現論
  鏡としての仮現論──『フィリポによる福音書』
 5 新婦の部屋 160
  グノーシス主義における終末論
  ヴァレンティノス派の体系と終末論
  新婦の部屋──自己と他者の新たな結合の様式
  結婚の儀礼
  「不安の時代」の症候

第4章 息を吹き込まれた言葉
     ──グノーシス主義とキリスト教
179

  「キリスト教の異端」としてのグノーシス主義
 1 グノーシス主義とキリスト教 180
  前キリスト教グノーシス
  非キリスト教グノーシス
  「グノーシス主義」と「キリスト教」の共通の課題
   1 形而上学の導入
   2 救済者=「父なる神」の表象
   3 聖書的伝統の重視
 2 神の三つのペルソナ──キリスト教教義の要約 190
  アレクサンドリアのフィロン
  ロゴス=キリスト論の発展
   1 『ヨハネによる福音書』
   2 殉教者ユスティノス
   3 エイレナイオス
   4 アレクサンドリアのクレメンス
   5 テルトゥリアヌス
   6 オリゲネス
  ロゴス=キリスト論とは
  聖霊の働き
  「聖霊による洗礼」と神の名
  聖霊と聖書解釈
 3 言葉の分裂 220
  父を知らない神
  『三部の教え』におけるロゴス論
  言葉の混乱
  旧約聖書の切り分け
  『フローラへの手紙』
  解釈学上の差異
  使徒たちの対立
  『ペトロの黙示録』
  『ユダの福音書』
 4 真の神の名 242
  洗礼の両義性
  「神の名」のための殉教
  迷いの名
  隠された神の名
  舌語としての神の名
  『イエウの二書』
  それぞれの結末

 文献一覧 267

 あとがき 273

■書評
島薗進氏『週刊読書人』2010年2月5日号

井上章一氏『週刊ポスト』2010年3月5日号


井上章一氏『日本経済新聞(夕刊)』2010年3月10日号


   ■修正箇所一覧  
頁数・行数 修正前 修正後 備考
44頁・6行 当初は諸部族の長たちの連合による貴族的共和制であったが、  当初は諸部族の長たちが寄り集って形成する連合体であったが、 新装版で修正済み
236頁・12行 書き記したものとされているいうこと 書き記したものとされているいうこと 新装版で修正済み